I wouldn't be alive if I wasn't hard. I wouldn't deserve to be alive if I couldn't ever be gentle.
「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」 (清水俊二訳、ハヤカワ文庫、1977年)
レイモンド・チャンドラー Raymond Thornton Chandler (1888-1959) のハードボイルド小説、プレイバック Playback (1958) の主人公、私立探偵フィリップ・マーロウ Phillip Marlowe のセリフです。
相手役の女性ベティから 「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなにやさしくなれるの?」 と聞かれて答えるのですが、ちょっとわかりにくいですよね。
ここは、原文に戻って、英語の勉強をしてみましょう。
この文章は仮定法過去です。
hardを何と訳すかが難しいところですが、人の性質を表わし、gentleに対比する言葉として使われていますので、私は、ここでは「厳しい」と訳しておきます。ハードボイルドですので、「非情」でもいいのですが。
英文和訳問題の解答としては、直訳ですが、
「もし、私が厳しくなかったなら、私は生きていなかっただろう。
もし、私が全く優しくなれなかったなら、私は生きているのに値しなかっただろう。」
厳しいだけではだめ、やさしいだけでもだめ、ということですね。
私立探偵として生きていくのに厳しさ(非情さ)は必要ですが、時には、人として見せるやさしさがないといけないということでしょう。
これでもまだちょっとわかりにくいので、この二律背反の問題を別の話におきかえてみます。
「普通でなければ生きていけない。個性的でなければ生きていく価値がない。」
普通なだけでは凡人です。個性的なだけなら変人です。普通であることは社会のなかで生きていくのに大切ですが、その上で、どこか人と違うところががないと、人より際立つことはできません。
一筋縄ではいかない人でいいのですよ。
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