医学の話です。
臨床と研究は、基本的にスタンスが異なります。
基礎医学の研究はオリジナリティーとプライオリティーが最も重要と言われます。
過去、および、現在のどの研究とも違いがなければなりません。
これまでのどの研究にもなかった新しい発見がなければなりません。
すでにわかっていることを研究することは意味がありません。
オリジナリティーは自分で見つけるものであって、待っていればやってくるものではありません。
また、新しい発見は、前もって予見できないから発見なのです。
「発見とは、万人の目に触れるものを見て、誰も考えなかったことを考えること」であり、
Discovery consists of seeing what everybody has seen and thinking what no body has thought.
「発見とは、準備された精神との偶然の出会い」です。
A discovery is said to be an accident meeting a prepared mind.
いずれも、ビタミンCの発見でノーベル賞を受賞したアルベルト・セント-ジェルジ Albert von Szent-Györgyi Nagyrápolt (1893-1986) の言葉です。
医学の臨床はこれとは異なり、医師が行う治療は誰もが認めるものでなければなりません。
その最たるものが治療ガイドラインです。推奨される治療法がエビデンスに基づいて検証されています。とのどの医師も考えつかない治療法は人体実験と呼ばれて認められません。
しかも、患者さんは向こうからやってくるのであり、いつやってくるかもわからないのです。
また、患者さんという相手があることですから、医師にとって最高の治療を行うことが、患者さんにとっても最高の満足が得られることと同じではありません。
「時に癒し、しばしば和らげ、常に慰む」
Guerir quelquefois. Soulager souvent. Consoler toujours.
これはフランス語ですが、英訳は、
To cure sometimes. To relieve often. To comfort always.
結核サナトリウムを創設したエドワード・トルードー Edward Livingstone Trudeau (1848-1873) の言葉です。
病気を治せなくても、患者さんの心のケアはいつも必要だといっています。
臨床と研究、どちらを目指しても、難しい道でしょう。
ただ、自分がどちらにより向いているのかは、考えておいたほうが良いでしょうね。
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